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何となく解っているつもりでいても、イマイチ釈然としないものの代表がこれです。放射能と放射線は、どこがどう違うのか?。

放射能 : 「物質が、放射線を発生しうる能力。あるいは放射線を発生する物質のこと。」…それじゃあ、ピンときませんよねぇ。ちょっと詳しく解説しましょう。

物質を構成する最小単位である原子。原子は「原子核」とその周りを回転運動する「電子」からなり、さらに原子核は「陽子」と「中性子」により構成されています。
多くの原子は原子核が安定した状態ですが、陽子と中性子の数がアンバランスであったり、鉛よりも質量数(陽子と中性子の総数)が大きい原子の原子核には、不安定なものがあります。不安定な原子核というのは「半減期」があり、つまりいつか寿命がきて壊れる(崩壊・壊変という)運命にあることを意味します。
原子核が崩壊するとどうなるかというと、アルファ線・ベータ線・ガンマー線といった放射線を放出します。
壊れ方は原子によっても様々で、アルファ線(陽子2個と中性子2個の粒子=ヘリウム原子核)を放出するもの、中性子のうちのひとつがベータ線(電子)を放出して陽子に姿を変えるもの、陽子が電子を取り込んで中性子に姿を変えるもの、あるいは陽子が陽電子(反陽子:プラスの電荷を帯びた陽子)を出して中性子になるもの、など様々です。また、それに伴いガンマー線も放出されます。ここで重要なことは、これら粒子や電磁波は大きなエネルギーをもっていることです。
崩壊の結果、原子核は陽子の数が変わります。つまり「原子番号」が変わることを意味します。
このように、自発的な原子核の崩壊にまつわるエネルギー(放射線)の発生が、放射能の正体というわけです。


放射線 : さて、上記のとうり放射能をもつ原子核からアルファ線・ベータ線(電子線)といった荷電粒子としての放射線、あるいはガンマー線のような電磁波としての放射線が放出されます。
あるいはX線のように人為的に発生させた電磁波、そして加速器によって発生される粒子線もまた、いずれも同じく放射線とよばれます。では、いったい放射線とはどんなものでしょう?

放射線は、物質に対して「電離」とか「励起」という作用を引き起こします。ひらたく言えば、安定した分子をイオン化させることによって、化学的に不安定な状態へと変化させる作用です。いわゆる「フリーラジカル」も発生します。この化学的作用が、写真を感光させたりするわけです。
自然界において、フリーラジカル自体はどうってことないのですが、こと生体内においては大きなトラブルの元となります。たとえば染色体(遺伝子)を傷つけたり、生体内での正常な化学反応を阻害します。特に染色体への損傷は細胞にとって致命的で、細胞が死に至ることさえあります。

しかし、ちょっとやそっとの放射線は、実はそんなに心配するほどのことはないんです。「電離・励起」という作用は、紫外線などでも日常的に起きていますし(体表面だけですが)。我々の体は「自然放射線」に有史以前からさらされ続けてきました。にも関わらず、どっこい我々は繁栄してきたわけです。それは、長い歴史の中で細胞が、遺伝子修復の能力を獲得しているから。
もしも細胞が致死的な損傷を受けた場合、「自殺発動プログラム」が発動され、細胞を自らの能力において死に至らしめますし、修復可能な損傷は、「修復プログラム」が作動して元どうりの遺伝子へと回復させる能力をもっています。
そうでなければX線など医療目的での放射線さえ、危険すぎてとてもじゃないけど容認できるものではありませんよね。

もちろんこれも限界はあります。被爆事故などで大量の放射線を被爆すれば、体細胞全体にわたって致死的な損傷を受け、人体は死に至ります。

放射能と放射線