アルファ線 : 放射性同位体のアルファ崩壊により放出される放射線(=α粒子)。α粒子の正体は2つの陽子、2つの中性子からなる、ヘリウム原子核そのものです。普通のヘリウムとの違いは、電子を伴わない原子核の状態になっていることと、大きな運動エネルギーをもっていることで、電離能力(*1)が非常に大きく電界・磁界の影響を受けやすい性質をもっています。核分裂にともなって発生するα線は、薄い紙程度で遮蔽(しゃへい)可能。
ベータ線 : 放射性同位体のベータ崩壊により放出される放射線。正体は電子そのもの(プラス電荷の「陽電子」もある!)で、電離能力を有し、質量は小さいが電・磁界の影響を受けやすく、β線自体はアルミニウム程度の軽金属でも遮蔽可能。(β線は遮蔽できても、結果としてX線が発生します・・・。)
ガンマ線 : α・β崩壊にともなって原子核から放出される放射線。光子、つまり「光」の性質を持つ。性質はX線とよく似ていますが、単一エネルギーすなわち、単一波長です。電離能力を有し、質量は限りなくゼロに近く、電荷もありません。従って透過力が高く、遮蔽には鉛など重金属を使用します。
中性子線 : 中性子は様々な人為的操作により発生させることも可能ですが、いちばん知られているのは核分裂によって自然発生する中性子でしょう。例えば質量数の大きいウランは、わずかながら「自発核分裂」を起こして、ほぼ半分ずつの2つの原子核へと分裂し、中性子を放出します。このとき、分裂する原子核はごくわずかに質量を失い、失われた質量は、分裂した粒子の運動エネルギーに変わります。
中性子はそのエネルギー(速度)によって性質が大きく異なります。エネルギーの大きい中性子は、鉛などをも透過しますが、水素など質量数の小さい軽元素で散乱させると、次第にエネルギーを失って、最終的には核反応を起こします。核反応とはつまり、他の原子核に吸収されるということです。中性子を吸収した原子核は、その多くが不安定な放射性同位元素となります。これを、中性子による放射化といいます。
人為的な核分裂の原理は、もともと不安定な放射性元素(ウラン235など)に中性子を吸収させ、核分裂を起こさせることにあります。核分裂により、さらに新たな中性子が放出されるので、核物質の密度や中性子の速度(エネルギー)を適度に調節することによって、核分裂反応が連鎖的に繰り返していきます。この、核反応の連鎖が始まった状態を「
臨界」と呼ぶのです。
例えばウラン235の濃度を調節することによって、エネルギー発生の機序は異なります。臨界が比較的起こりにくい条件で、緩やかに臨界を持続させていくのが原子炉。臨界が非常に起こりやすいギリギリの条件で、臨界を起こさず保ち、一気に臨界点を解放させるのが、核爆弾です。
広島型原爆で使用されたウラン235は60Kgですが、そのうち実際に核分裂を起こしたのは1Kg程度といわれています(ということは、のこりはバラ撒かれたわけです)。さらにいえば、核反応で失われた質量は1g以下。その程度の質量が全てエネルギーに変わったというだけで、あれだけの大惨事を引き起こしてしまうわけです。兵器として原子力を用いるのは、どう考えても正当性があり得ないでしょう。
その他:電子・陽子などの荷電粒子が電界磁界の影響を受けやすいことを利用して、高エネルギーの粒子線をつくる「加速器」というものがあります。人工的に電子線・陽子線・そのほか重粒子線・中間子などを発生させることができます。
*1:電離能力
放射線が物質の中を通過するとき、放射線は自らのエネルギーを次第に失い、透過した物質にエネルギーを与える。このとき物質の原子・電子は、「電離・励起」の状態となる。簡単にいうと、安定だった原子や分子が、化学反応を起こしやすい不安定な状態になるということ。透過するのが生体であるならば、最も安定性が必要とされる「染色体」に損傷を受ける可能性があるわけで、放射線の危険性が恐れられている最大の核心はここにある。