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放射線は身近な生活の中で、あるいは医療・工業・農業などで広く利用されています。
大雑把に、病院でもおなじみのエックス線と、いわゆる「放射能」と呼ばれる放射性同位体からの放射線とに分類できますが、その実態はあまり一般には理解されてはいないようで・・・。

エックス線は通常、X線発生装置のX線管球で人為的に発生され、原理は、大雑把に言ってブラウン管に似ています。
そういえば、テレビも出始めの頃は、微量のX線が出ていたそうです。特に「B電源」(というのがあるらしい)の電圧が下がったときに出てしまうようで、現在は、安全回路とフィルタリングがあるので大丈夫のようです。
話がそれました、X線は、高電圧によって加速された電子が、「ターゲット」となる金属に衝突することで発生します。電子の運動エネルギーのうち、99%が熱に、残り約1%のエネルギーがX線に姿を変えるのです。
ですから、X線装置を操作していないときは、基本的にX線は出ません。
病院のX線撮影室も、何となく薄暗く怪しく、不気味だったりしますが、撮影室内に常にX線が漏れたりしてるワケではないんです。

放射性同位体からの放射線には、α線・β線・γ線・中性子線等があり、それぞれ同位体によって、どんな種類の放射線がどのようなエネルギーをもって放出されるか、決まっています。
それら放射線の特性を利用して、さまざまな場面で使われているんです。
簡単に、身近なところから紹介してみます。
放射線の利用
●グロー放電球

蛍光灯も最近ではインバーター式が増えてきて、グロー球を使ったものから置き換わりつつあります。
照明のスイッチを入れると青紫の小さいランプが点滅して、蛍光灯を点灯させるタイプのものに、グロー球は使われています。
グロー球の中にはプロメチウム147(半減期2.6年)あるいはクリプトン85(半減期10.7年)が封入されていて、ベータ線の放出による電離作用により、容易に放電が起こる原理になっています。

スイッチを入れると直ちにグロー球に放電が起こり、蛍光灯のフィラメントにを温めると同時に、グロー球のバイメタルを温めます。すると、バイメタルは熱により歪曲してグロー球はショート。それによって、蛍光灯のフィラメントにさらに大きい電流が流れて、熱電子が次第に増加、放電が起こりやすい状況が形成されます。
その瞬間、グロー球には電圧が加わらなくなるため、こんどはバイメタルが冷えて電極が離れ、サージ電圧が発生。この動作を数回繰り返して蛍光灯を点灯させます。
よく考えましたよね、こんな機構。感心します。
グロー球がない頃は、グロー球の代わりに手動でスイッチしてたんですよ。わかってもらえるかなぁ?
スイッチをいれてしばらく、押しっぱなしでそのあと離せば、グロー球と作用は同じなわけです。私が小さいころには、まだ残ってましたよ!そんな蛍光灯。点灯するまで時間かかるんです、これが(といっても2秒ぐらいではありますが)。おまけに、あせって短いタイミングでスイッチを離すと、点灯し損ねるんですね。フィラメントが温まりきらなくて・・・。
●空港での手荷物検査

おなじみ、空港での手荷物検査ですね。検診などで、いわゆるバリウムを飲んで胃を「X線透視」する検査がありますが、原理は同じです。バッグなど機内持ち込みの手荷物を、いちいち開けずとも「透かし見」できるんですね。最新式のものは、内容物の形だけでなく材質なども判別して、表示されるようになっています。
●煙感知器

火災の兆候である煙の発生を、いちはやく感知して警報を発する煙感知器。イオン式と光電式があり、イオン式のものはアルファ線を放出するアメリシウム241(半減期433年)が使用されています。
センサー内のアメリシウムからアルファ線が放出、電離したイオンが発生して、すぐ横のセンサーで検知されます。
この間に煙が入ると、アルファ線の運動が妨げられて電離電流が減少し、既定のレベル以下に達すると警報を発する仕組みです。
消防設備会社の話によれば、イオン式のものは誤報が多く、最近ではあまり使われなくなった、とのことです。
光電式
●夜光塗料

目覚まし時計や腕時計の文字盤の夜光塗料。プロメチウム147が使われます。その昔は、ラジウムが使われていた時代がありました。ラジウムは、プロメチウムと異なり崩壊後もラドン>ポロニウム…と次々と崩壊を繰り返します(崩壊系列核種)。
したがって夜光塗料の使用量に対して放射能が大きく、時計の文字盤に塗料を塗る作業を行っていた女工さんたちに、軽中度の放射線障害がみられた、なんてこともあったようです。
ごく身近なところにも、放射性物質が使われています。
身近な放射線源