台湾のジャーナリストが報道し、NGO「台湾放射能安全促進会」の調査により確認された放射能汚染事故(事件?)。なんと、一般のマンションやオフィスビルの建築資材に、原子炉解体の際排出したスクラップを再利用したのが原因、というとんでもない問題です。

問題が表面化したのが1992年夏で、汚染箇所はオフィスや住居など180棟・1555世帯にのぼり、経済的理由などからそのうち80%・約8000人が、今だ住み続けているそうです。日本からの調査団によれば、被爆線量は最大で年間許容被爆線量(*1)の2000倍にあたる家屋があり、一刻も早い対策が必要な大問題です。

(*1)年間許容線量
ICRP(国際放射線防護委員会)勧告による、個人の被爆線量の最大許容限度。
一般公衆の線量限度は1mSv/年(0.25mSv/3月)で、医療被曝は考慮に
入れない数値。
   
台湾での、原子炉廃材による放射能汚染問題
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核実験 ―フォールアウト―
フォールアウトとは、放射性降下物と訳され、「大気圏内核実験に伴う、核反応生成物質の地上へ降下」のことです。1986年4月26日の、チェルノブイリ原発事故による放射能の世界的拡散もまた、フォールアウトと呼ばれています。
今でこそ「臨界前核実験」がCTBT(包括的核実験禁止条約)に違反するとかしないとか話題になっていますが、1960年を中心に「大気圏内核実験」がアメリカ・ソ連(当時)を中心にひんぱんに行われていたわけです。1945〜1980年の間に計423回、TNT火薬に換算して5億4千6百万トン(!)もの核爆弾を地上洋上を問わず、こぞって炸裂させるという、とんでもないことが行われていたのです。私が小さいころにも、お隣り中国で数回の核実験が行われて、そのフォールアウトが日本にも飛散するかも〜、なんてこともありました。「雨天時、外出の際には必ず傘をさして下さい、さもないと脱毛の危険が・・・」などとTVで呼びかたり、今では考えられない、ひどい状況でした。実際には、日本ではそれほど深刻な放射線障害は起こらなかったわけですが。これら核実験の放射能は、実験場の周辺では局地的フォールアウトとして広島・長崎の原爆と同じ「死の灰」として降り注ぎます。
局地的1954年3月1日に起きた、マーシャル諸島ビキニ環礁における第五福竜丸乗組員23人の被爆事故は、あまりにも有名です。これは、遠洋マグロ漁船である第五福竜丸が南太平洋のビキニ環礁付近(160Km沖)で操業中、アメリカ軍がおこなった広島型原爆の1000倍もの威力をもつ水爆の核実験に遭遇、爆風や熱線ではなく、局地的フォールアウトによる急性放射線被爆により犠牲者が出た事故です。
核実験の甚大な威力により、放射性物質は成層圏に達するほど上空に巻き上げられ、放射能の9割以上は全世界にばらまかれます。これを世界的フォールアウトあるいは成層圏性フォールアウトと呼びます。1982年UNCEAR報告書によれば、全フォールアウトの放射能は、自然放射線の約3年分に相当する量にもなります。
1960年代、フォールアウトによって自然放射線のレベルが約10%ほども増加していたといいますが、現在では殆ど観測されないほどまで減少しています。しかし、核反応生成物のなかにはプルトニウムなど、半減期の非常に長いもの(数千〜数万年)が含まれていますので、完全にその影響が取り除かれるには、さらに気の遠くなるような年月を要します。
核実験フォールアウトからの被爆として、特に人体への影響が大きい放射性同位体は、以下の4種類。
 トリチウム(水素3) 半減期12.3年
 炭素14 半減期5730年
 ストロンチウム90 半減期28.8年
 セシウム137 半減期30.2年

現在では大気圏内核実験は行われなくなったとはいえ、地下核実験も含めるともう2000回も核のゴミが地球上でばらまかれています。最近では1996年に中国とフランスで、1998年にはインドとパキスタンが地下核実験を強行しています。もうこのような事は早くおしまいにしないと・・・。人間はつくづく愚かな生き物です。まだ2万発の核爆弾が現存しています。
フォ−ルアウト ―Radioactive Fallout―